26年無職の男

なす

僕にはある特殊な友人がいる。
同級生で頻繁に宅飲みをする間柄なのだが、

何が特殊なのかというと彼は26年間無職なのだ。
24歳で某家電量販店を退職して以来働いていないのだ。

それ自体は僕は特別に驚かない。
このくらい生きているといろんな人を見てきた。

それを聞いても、「まーいいんじゃない?生きていけるのなら。
しがらみのない人生もそれはそれで楽でしょう、と思う部分もあるし」
くらいに思っていた。

しかし会話を重ねているうちに、その人間、、
顔が野菜の「なす」っぽいので、
そして僕は彼のことを「先生」と呼んでいるので、
“なす先生”としよう。

先生の稀有な人間性が見えてくるのである。

ちなみに文にするのは本人の了承済みである。
そして彼自身は多少の自覚はあれども、悲壮感はない。

目次

ざっくり紹介すると

先生は高校は地元の進学校に行き、大学も行ってるので、元々頭は悪くはない。
話の理解力もある。

自分の弱さもさらけ出せるところは、面白い人間だなと思った。

どこが特殊かというと、
24歳のまま止まっているのだ。とどまっているのだ。アップデートがない。

同じ年月を生きた人間として、ここ20数年間のいろいろな面での進んでない具合に驚いた。


20中盤くらいからの、漫画、映画、音楽、本などほとんど知らない。
友人や異性とどこかで遊んだ話もなくはないが、
いつも同じ逸話しか聞かない。

40歳くらいまでパチンコで食ってたらしい。
ひたすらパチンコと実家という生活だったのだろう。

ここ10年くらいはスマホがあるのでそれなりに情報には触れているようだが、

YouTubeで見るエンタメはいつも、「金八先生」と「北の国から」と「全日本プロレス」。
いまだに飽きもせず見ている。
何回見ているのだろう、、


現在の生活は、昼過ぎに買い物で毎日イオンに行って時間をつぶして、
あとは酒飲んでYouTubeという日々をひたすら送っている。
やることがイオンに行くことしかないのだ。

近所の部落の集まりだけは頑張っているみたいだ。
ここ3年前くらいくらいからやっと楽しくなってきたらしい。


酒は40過ぎに飲めるようになった。
飲んでる姿しか見てないから、驚いた。

タバコは1日ひと箱。
お金があれば何の問題もなかろうけど、生活を見聞きする限り財政状況はやばい状況だ。



今現在つらい境遇を生きてる人はいっぱいいるだろう。
人は大なり小なり問題を抱えて生きている。

そして働いてたり、何かに取り組んでいたり依存したり、人生にはなにかしらあるであろう。
というか働かざるを得ない、という人が大半だろう。

自ら社会の底辺だと思っている人たちだって、過去には何かしらの営みや歴史がある。


ただ彼には時代の流れや営みの歴史を感じない、
そしてそれは今現在もそう。

出会って3年のあいだの生態を観察してきたが、
主体的な行動を何もしていない、、何も!

26年ただこれを繰りかえしてきたのだろうと思ってしまう。

・問題があっても策を全く講じない。
・経験したことしかしない。
・小さいことでも変化を避ける。
・世間への怖がりが異常。(世間が怖いのはわからなくはないが、その異常ぶりは後で記そうか)

それを形成するに至った彼の現在の言動や性格はそれを物語っていた。

・「銀だこ事件

事件てことでもないのだが、宅飲みでの会話

なす先生「イオンで銀だこに人並んでるんだけど、すしやよ、銀だこってうまいのか?」

すしや(僕)「まあ、普通にうまいよ。せんせーは食ったことないのか?」

「ない」

「食ってみりゃいいじゃん」

「食えねー、高くて買えねー。  すしやもわかるだろうよ、あんなんに500円近くだせねーべや!」


すしや「いや、高いのはまあわからなくはない。たこ焼きだしな。  
別に食いたいと思わないならそれでいいけど、どんなものか興味あるんだろ? 
食ってみたいんなら買えばいい。」

なす先生「買えねっつの」

「は? 毎日タバコ買ってるくせに何言ってんの? 買えるだろ。」

「買えねー! あんな8個くらいであの値段だぞ! すしやもわかるべ!」

「全っっっ然わからねー!  いや1回食ってみたいんだろ?」

「1回くらい食ってみてーさ、、」

「じゃ、買えばいいじゃん! ちょっと高く感じるのはわかるとしよう。
けど食ったことなくて食ってみたいなら買うでしょ普通。 
そこ銀だこごときで悩むところじゃないぞ!
俺もね、欲しいゴルフのドライバーがあってそれは悩む。
けど銀だこレベルの食べたいものどんどん買っていけって。
中高生だって普通に買ってるぞ!」

「そうなんだよな! 学生達も買ってんだよねー」

「な!じゃねーよ! 
わかった、先生はそういった新しいことをする行動が足りないと思うぞ。
いいから今度思いきって買って食え!」


数日後、、
なす先生「今日パチンコで2万勝ってよ、イオンで総菜と弁当が半額で450円で買ってきたやー、うまかったー」

すしや(僕)「せんせーよ、どうせ買うんなら銀だこ買えばよかったじゃんか。」

「買えね、っつの、あっち半額じゃねーし」

「パチンコ勝ったんだろ? で、その額を飯に使ったんだろ? 銀だこ買えばいいじゃんか」

「買えねーっつの! すしやもわかるだろうがよー」


すしや「、、、、、、、、、」

なす先生「何した?」


すしや「いや、あきれてものも言えねーわ、」

なす先生「あめーっ!」

その時僕はなす先生の半生を見た気がした、

そこを我慢というのかな、、 なんというか普通のことを満たしてきていないのだ。
なす先生はその辺で自分にブレーキをし続けて、(ブレーキなのかな?)
変わったことを避け続け、(変わったことなのかな?)
とにかくその辺で
普通に経験するであろうことをしてきてないのだろう。

もはやブレーキでもないのだろう、彼にとってはそれが当たり前なのだ。

それまでもいろいろ話をしてきて、「なんか経験が少ないな」とは思っていたけど、

その会話の時に、「そうか。 そういうことなんだー、 まじかー」と心の中で思った。

その経験値、行動の少なさの整合性に直面し、
僕が見ていない先生の半生が見えた気がしたのだ。

逆になんか目が見開いた感じがした。




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